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日本計量新報 2011年12月4日 (2896号)

国際単位系の進化と現場計測で求められるもの

 国際単位系とは、世界の国々が公式に用いることにしている計量の単位系である。略称のSIは、「Le Syste`me International d'Unite´s」の略。単位系の基礎となるメートル法をフランスが発案したことから、フランス語が使われている。

 国際単位系(以下SI)は、十進法を原則とした単位系で、メートル法(度量衡の国際的な統一を目的として、1875年5月20日に成立したメートル条約に基づくメートルに関する法律)で広く使用されていたMKS単位系(長さにメートル〔m〕、質量にキログラム〔kg〕、時間に秒〔s〕を単位として用い、この3つの組み合わせで色々な量の単位を表現していたもの)を拡張したものである。
 単位系は時代とともに発展している。現在世界共通のルールとなっているSIは、1960年に第11回国際度量衡総会で承認され、広く認識されることとなったが、今後も進化していくことが予測される。

 質量の基準となるキログラムは、SIにおける7つの基本単位の中で唯一、人工物(=国際キログラム原器)によって定義されている。2011年10月21日開催の国際度量衡総会は、キログラムの定義を、国際キログラム原器の質量から、他の6つの基本単位のように物理法則を用いて定義へ変更する方向性を決議した。
 そのことに関連して、SIの具体的な内容がどのようなものであるか述べたい。

 SIは、7つの基本単位と、所定の量の定義にしたがって、この基本単位を組み合わせて表現されるSI組立単位を構成要素とする集合と,20個のSI接頭語およびそれによって作られる10の整数乗倍の大きさを意味する倍量および分量単位によって構成される。
 SIの7つの基本単位と定義は以下のとおり(名称〔記号:量〕=定義)。

メートル(m:長さ)=1秒の2億9979万2458分の1の時間に光が真空中を伝わる行程の長さ。
キログラム(kg:質量)=国際キログラム原器の質量と等しい。
秒(s:時間)=セシウム133の原子の基底状態の2つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の周期の91億9263万1770倍の継続時間。
アンペア(A:電流)=真空中に1mの間隔で平行に置かれた無限に小さい円形の断面積を有する無限に長い2本の直線状導体のそれぞれを流れ、これらの導体の1mにつき2×10-7 ニュートンの力を及ぼし合う一定の電流。
ケルビン(K:温度)=水の三重点の熱力学温度の273・16分の1。
カンデラ(cd:光度)=周波数540テラヘルツの単色光放射を放出し、所定の方向におけるその放射強度が683分の1ワット毎ステラジアンである光源の、その方向における光度。
モル(mol:物質量)=0.012キログラムの炭素12の中に存在する原子の数と等しい構成要素を含む系の物質量。
 すべての量(物理量)は基本(物理)量を組み合わせた組立量として記述でき、組立単位を単位として計量される。その組立単位は、基本単位の積で定義される。しかしSIでは、使用頻度が高いヘルツ(Hz:周波数)やニュートン(N:力)など22の組立量に対して、その単位の固有の名称と単位記号を認めている。

基本単位の組み合わせによる表現よりもはるかに簡単になるためである。
 また単独のSI単位の大きさに比べて、はるかに大きい量や小さい量を表す際に数値の大きさを理解するのに便利なよう、10の乗数を表す20個のSI接頭語が決められている。これらはSIの基本単位とでも、組立単位とでも任意に組み合わせて使うことが認められている。
SIは世界的に承認された唯一の単位系なので、国際的な情報交換においては、これを使用することが際だって有利となる。しかし実用の現場では、非SI単位も広く使われている。SIでは、社会通念・歴史的観点から今後ともSIと併用される特別に重要な単位を提示している。時(h)やリットル(Lまたはl)、トン(t)などはSI単位ではないが、我々の文化に深く根ざしており、これからも使われることが予想される単位である。

 加えて、原子物理学および天文学で用いる3個の単位をSI単位との換算関係を与えて採用している。

 なお、SIの使い方はCIPM(メートル条約に基づいて1875年に設立された国際委員会で、18名の国籍の異なる委員で構成される。その主な役割は、計量単位を世界的に統一することであり、メートル条約組織の最高機関である)とISOによって定められているが,実用上のルールは国際規格ISO1000,日本工業規格JIS Z 8203[国際単位系(SI)及びその使い方]に規定されている。

 技術が進歩し、科学・工学そのほか人類のあらゆる分野で、さまざまな精度での測定技術確立への要求が高まっている。SI単位系は、それらに応えるため常に進展している。
 しかしながら、キログラムの定義が変わっても、計測現場での質量の実際的な標準器が分銅である事に変わりはない。現場で求められる課題は、確実な質量の確認と計測と標準の流れを実現することであり、それは現在のトレーサビリティ制度・方式で充足しているからである。

 

 

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