日本計量新報 2011年6月5日 (2872号)2面掲載
特集 工業製品における放射線測定安全・安心の証明のために
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日本計量新報 2011年6月5日 (2872号)2面掲載
工業製品をはかる放射線測定器工業製品の放射線汚染測定には、大きく分けて「空間線量率測定」と「表面汚染測定」がある。 個別の製品の表面に付着している放射性物質の有無を調べるには、「表面汚染測定サーベイメーター」を用いる。表面から出ているβ線を測定し、微細な汚染を検出する。β線は透過性が弱く、梱包などの上からは検出できない。 コンテナや梱包の上から測定する場合は、空間中を飛ぶγ線を測定する「空間線量率サーベイメーター」を使う。ただし、この方法では個別の製品の微細な汚染は検出できない。 空間線量率サーベイメーターγ線を測定し、空間線量率を「μsV/h(マイクロシーベルト毎時)」で表示する。JIS Z 4333:2006「X線及びγ線用線量当量率サーベイメータ」で規格化されている。 検出器の主な種類は以下の通り。 ▽電離箱式=円筒電極の中に中心電極を張った二極管に、アルゴンガスなどの気体を封入し、両極間に電圧をかけておく。γ線によって作られたイオンを中心電極で収集し、その電流を測定することによって線量を評価する。 正確な線量評価が可能だが、感度が低い。1μsV/h以上で使用する。 電離箱のしくみ(上、提供:産総研齋藤則生)と電離箱式サーベイメーター ▽GM管式=電離箱より高い電圧をかける。放射線によって生成された電子により起きる放電(パルス)の回数を数えることによって、放射線の強さを測定する。 電離箱式より高感度だが、エネルギー特性が悪く正確な線量評価が難しい。0.3μsV/h以上で使用する。 GM管式サーベイメーター ▽シンチレーション式=放射線と反応する際に微弱な光を発する物質(シンチレーター)を利用する。発せられた光を電流に変換し、得られたパルス電流を計数することで放射線を測定する。γ線測定には主にNaI(Tl)シンチレーターを用いる。 感度が高く(0.01μsV/h以上)、エネルギー補正しているものであれば線量評価も正確なので微少な線量測定に有効。ただし、高線量では測定できない(数十μsV/hまで)。 シンチレーション式サーベイメーター ▽半導体式=基本原理は電離箱式と同じだが、気体ではなく半導体(シリコン、ゲルマニウムなど)を利用してパルスを生じさせる。 表面汚染測定サーベイメーター表面から放出されるα線またはβ線を測定し、表面に付着している放射性物質の密度を測るもの。透過力の弱いα線、β線に対して十分な感度が得られることが必要なため、厚みが薄く放射線の吸収が少なく、面積の大きい入射窓を持つ検出器が用いられる。JIS Z4329:2004「放射性表面汚染サーベイメータ」で規格化されている。 測定時の単位は「CPM(Count Per Minute)」。JISに従って、CPMから表面汚染Bq/立方センチメートルに換算可能。 β線の測定には、口径の広いGM管式サーベイメーターが多く用いられている。 表面汚染測定サーベイメーター 放射線測定器は精密測定器放射線測定器は、よくある電流測定器などに比べてはるかに感度が高く壊れやすいため、衝撃を避けて使用する必要がある。また、測定器自体が汚染されないよう、検出器は薄いビニール袋やラップフィルムなどで覆っておく。屋外や汚染が予想される場所では、本体も薄いビニール袋で覆う。 |
日本計量新報 2011年6月5日 (2872号)2面掲載
経産省 放射線検査費用を助成経済産業省は、海外への輸出品にかかる放射線検査費用を一部助成する。工業製品などの放射線検査には、平均すると1件あたり8万円程度の費用負担がかかっており、企業にとっては大きな負担となっている。このため同省は、企業が国の指定する検査機関に依頼し工業製品や食料品などから出る放射線検査を受けた場合、その検査費用について大企業には半額、中小企業の場合には9割相当分を国が助成することにした。詳しくは経済産業省貿易振興課(03−3501−1511)まで。 検査費用は各所で違うので問い合わせてみることが大事だ。自治体では1企業5検体まで無料で、表面汚染測定を行っているところもある。試験体は1検体ずつ透明なビニール袋で包装し、口を閉じて持参すること。 日本貿易振興機構(ジェトロ)のホームページに検査機関の一覧が掲載されている(http://www.jetro.go.jp/world/shinsai/) 。 |