私ども経済産業省では、皆様の御協力を頂きながら、計量制度の見直しにつき、産業構造審議会産業技術分科会・計量行政審議会合同の計量制度検討小委員会において、平成17年8月から審議を頂いてまいりました。この集大成として、既に日本計量新報でも数回にわたり掲載いただいておりますように、本年の4月22日に、産業構造審議会及び計量行政審議会から答申を頂きました。そこで、紙面をお借りして、その概要や今後の見通し等について御紹介させていただきたいと思います。
1.検討の経緯
答申の内容に入る前に、検討の経緯について簡単に御紹介させていただきます。
御案内のとおり、現行の計量法は平成5年に施行されました。その後、幾つかの改正を加えながら経済社会の発展と消費生活の安心等の基盤として適切にその機能を果たしてきたわけですが、他方で、抜本改正後10年以上が経過し、
・安全・安心に関する国民の関心の高まり
・規制改革に関する政府の積極的取組の進展(規制改革・民間開放推進3か年計画(平成16年3月19日)等)
・国だけでなく地方公共団体を含めた行財政改革の必要性の増大
・計量行政を実施する上での地方公共団体間の体力格差の拡大
・技術の進歩
等、計量を巡る環境が多くの点で変化しており、これらの点を考慮しつつ、合理的、効果的かつ持続的な制度、体制等について検討する必要があるとの認識から、平成17年7月に、経済産業大臣から産業構造審議会及び計量行政審議会に対して、「新しい計量行政の方向について」として諮問がなされました。
同年8月以降、両審議会合同の計量制度検討小委員会(委員長:中田哲雄 同志社大学大学院ビジネス研究科教授)及びその下部機関として設置された第1〜第3WGにおいて精力的に検討が進められ、延べ23回にわたる審議の後、平成18年4月の第4回小委員会において、小委員会報告書案が取りまとめられ、同年6月に計量行政審議会に報告されました。
同年、パブリックコメントの募集や地方説明会が行われ、多くの有為な御意見を頂きました。
平成19年春には再度第3WGが開催され、計量証明事業者の能力・品質の担保等について、WGとしての論点を追加した修正案が取りまとめられました。
その後、事務局において、同修正案をもとに、パブリックコメントの反映や、その後の事実関係の変化への対応などの面から修正作業を行い、委員長及び委員の方々の了解のもと、小委員会の報告書が取りまとめられました。同報告書について、産業構造審議会及び計量行政審議会において必要な手続が行われ、4月22日付で両審議会の会長よりそれぞれ、「『計量制度検討小委員会報告書』のとおり取りまとめる」として甘利大臣あてに答申がなされました。
2.答申の概要
答申全文については現在日本計量新報に連載を頂いており、また当省のHP(http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004469/report01.html)でも御覧いただけますが、多岐にわたる御提言を頂いております。主なものをまとめると以下のようになります。
第1 計量の基準と計量標準の供給
1.計量単位
(1) 新たな単位が国際度量衡総会で採択された場合の速やかな対応を実施
(2) 取引・証明における法定計量単位以外の使用を禁じる現行制度を堅持
(3) 許容される非法定計量単位の表記の事例や、法令違反となるか否かの判断基準等の公表
2.計量標準の開発・供給
(1) NMIJを中核に関係機関が連携した国家計量標準の開発・供給体制の構築
(2) 特定標準器・特定標準物質の整備促進によるJCSSの拡充
第2 適正な計量の実施の確保
1.計量器の規制(検査・検定制度)
(1)規制の対象とすべき計量器
(1) 規制対象とする計量器の範囲等の見直しの実施
(2) 家庭用計量器については所要の環境整備を行った上で規制対象外へ
(2)計量器の規制の方法
(1) 自主検査の修理品への拡大、指定検定機関の業務範囲の見直し等、民間能力の更なる活用
(2) 製品の多様化、新技術及び国際基準に対応した規制基準等の設定
(3) サーベイランスの充実、不正事業者名の公表などの手続の整備による事後規制の充実
(4) 検査・検定手数料の実情に合わせた見直し
2.計量証明の事業
(1)計量証明事業の改善
(1) 地方公共団体の計量能力の維持、入札条件の見直し、業務の実施状況把握等による計量証明事業者の能力・品質の担保
(2) 不正行為についての情報共有、不正事業者に対する厳正な処分の実施
(3) 登録した事項に変更があったときの変更・廃止届出の徹底
(4) 計量証明事業の従事者に対する民間団体等による講習会への支援
(2)特定計量証明事業の改善
(1) 特定計量証明事業の認定基準としてISO/IEC17025への限定的な付加要件の維持と周知
(2) 特定計量証明事業の信頼性の確保のための、認定後のチェック機能の強化、特定計量証明事業の従事者に対する研修等
3.商品量目制度の着実な運用及び自主的な計量管理の推進
(1)商品量目制度等の着実な運用
(1) 不正な事業者の公表手続の整備等による制度執行の実効性の向上
(2) 国民(地域住民)の積極的参画(市場の監視機能の積極的な活用)
(3) 他法令との立入検査の相乗り等関係省庁における連携の推進
(4) 特殊容器については、自主管理・自主確認にゆだね、制度を廃止
(2)適正計量管理事業所制度
(1)適正計量に対する消費者の認知度の向上(新たなマーク制度等)
(3)計量士の活用
(1) 登録の更新による研修の受講、登録抹消手続等の導入
(2) 計量士の能力を活用した計量法の執行の推進
(4)情報提供による計量の普及啓発
(1) 国及び各地方公共団体の情報提供の充実・強化による国民の適正な計量に関する関心と知識の向上
(2) 不正計量の通報受付体制の整備等による住民(消費者)の主体的・積極的参画の促進
おわりに
計量制度に係る国と地方公共団体の役割分担の整理等
3.今後の見通し
答申で御提言を頂いた事項は前述のように多岐にわたります。残念ながら、今後ともすぐに改正案を国会へ提出することは困難な状況が予想されているところであり、政令・省令の改正等で対応可能なものから、必要な対応を行っていくこととしております。当面、優先的に取り組むものとして、例えば以下のようなものを想定しております。
特定計量器の見直しについては、関係機関・関係者から意見を伺った上で、審議会に諮る予定です。ここで必要となれば、最短で来年度に法令改正をしたいと考えております。
不正事業者名の公表手続、計量士の能力の活用による計量法の執行の推進、国民の適正な計量に関する意識の向上、適正計量管理事業所の指定手続の簡素化等、都道府県・特定市町村の取組を求める事項については、国としても一緒に検討が必要となる事項もあることから、全国計量行政会議の法令解釈委員会及び適正計量委員会の場で、都道府県・特定市町村と一緒に検討してまいりたいと考えております。
また、計量法上許容される非法定計量単位の表記の事例や判断基準の公表、計量の普及啓発等に関して、当省のHPを拡充することを予定しており、現在そのための作業を進めております。
その他の御提言も含め、皆様方とも御相談をしながら必要な対応を行っていく所存でございますので、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、この場をお借りして、関係者の皆様にお願いを申し上げます。
――了――
|