阿知波正之(司会) 話題を進めて、ISO10012の適用について、要求事項のなかで、従来の計測管理では対応が難しい「計量確認」(測定機器がその意図した用途の要求事項に適合していることを確認するために必要な一連の操作〔校正と計量検証〕)はどのように進めたらよいのでしょうか。
計測器の使用者が主体で
伊藤佳宏 私は製品の検査、製造、品質保証、設計などで、計測器を使っている人が主体となってするのがよいと考えています。
校正のタイミングでやるのがよい
植手稔 私は計量確認は校正のタイミングでおこなうのがよいと思います。
伊藤佳宏 新製品を作って、初品確認の段階で、使った計測器が製品の保証に使えるか確認します。
植手稔 初品はよいとしても、校正のサイクルが始まるので、校正のタイミングでするのがよいと考えます。
校正と検証は別
伊藤佳宏 ISO10012規格の要求事項としては、校正と検証は別であり、たとえば社外校正されたものを自社製品の測定に使えるか検証することを要求しており、この規格の特徴であると考えます。
校正部門と使用部門が一緒に
植手稔 それをいつのタイミングでやるかとなると、最初は初品の段階とし、その後は校正の都度するのがよいのではないでしょうか。それをだれがやるかとなると校正部門と使用部門が一緒にやらないと難しいです。
社外校正の場合など難しい
伊藤佳宏 校正のタイミングと検証のタイミングを一緒にする要求はないので、校正の都度おこなう必要はありません。しかし、社外校正をした場合とか、校正を分社化した場合とかは、いつ、だれがやるかを決めるのかは現実には難しいですね。
校正のタイミングで計量確認
中野廣幸 校正の結果により器差や不確かさが明確になります。その器差や不確かさが大きくなった場合、その測定には使えないが別の測定には使えることもあるので校正のタイミングで計量確認をすることになります。
植手稔 校正の結果により、その計測器のスペックに適合しているか判定するときと、外れていても使える場合もあり、必要な処置をして使っている場合もあり、それが計量確認となるのではないですか。
ISO10012規格を実際に運用していこうと思うと、計量確認は校正のタイミングでおこなうのが合理的です。
だれがやるか、明確にしなくては
伊藤佳宏 校正部門か使用部門かそれをだれがやるか、組織として明確にしなければなりません。規格はこれを要求しているが、具体的にどのようにするかは示していません。
計測管理部門が妥当ではないか
阿久津光 それを使用部門でおこなうのは難しいですね。確認の記録を残す必要があり、使用部門で個々の記録を残すのは、特に大きな組織となるとその取りまとめが非常に困難となるため、計測管理部門が対応するのが妥当ではないかと考えています。
小さな組織では配置困難
松山辰夫 組織が小さいと技術者も少なく、校正技術者とは別に計測管理技術者を配置するのは、難しいです。
植手稔 計測設計の段階でその計測器が使えるかどうかの計量確認されるが、そのときだけでよいですか。
松山辰夫 計測設計の段階で計測器の合格基準で計量確認されていれば、校正の段階で合格基準をクリアしていれば、再度、計量確認をする必要はありません。
用途確認が必要
阿久津光 その工程で使われていることが担保されていればよいが、その用途で使われていることの確認が必要ではないですか。
計測設計と定期校正の両方で推進するのがよい
植手稔 ISO10012の導入拡大を図っていくうえで、計量確認は計測器の導入段階での計測設計と、導入後の定期校正の結果検証の両方で推進するのがよいと思います。組織として計測管理部門と使用部門が協議して進める必要があります。
校正業務の分社化ではISO10012の導入が必要
阿知波正之(司会) 計測器の校正業務を分社化するとき、この計量確認の能力が低下するのではないかと悩みました。計測器の使い方の監査ができなくなるからです。その点からもISO10012の導入が必要だと思います。
伊藤佳宏 分社化すると経営上校正業務が重点となって、校正業務コストに重点がおかれ計量管理が手薄となることから、本体に戻した企業も数社あります。
計測管理技術者の人材育成が必要
植手稔 少し人材育成の話に戻りますが、校正担当者または校正技術者とは別に計測管理技術者の人材育成が必要で、校正結果を見て、スペックに適合しているかどうかの判定だけでは不十分で、市場での品質不具合の要因に計測の問題が隠れていないか推測する力をつけないといけません。社内での要因分析の結果、設計が悪い、しくみが悪いという結果に落ち着くことが多いですが、実は計測の問題が隠れていると私たちはそれとなく気付いて感じているのではないですか。
計測担当者が製品知識得るのは難しい
伊藤佳宏 計測管理部門は計測器の知識があっても、製品を測る知識が不十分で、測る物の品質をどのように保証しているかの知識が必要です。
ただ、それをやるのはだれかということが難しいですね。計測の担当者が広く製品の知識を得るのは難しいです。
計量確認のコミュニケーションが必要
植手稔 それはそのとおりで、校正結果を使用部門に示し、計量確認のコミュニケーションを取ることが必要だと思います。
校正のつどでは実際対応が困難
石川昌人 校正のつどとなると実際対応が困難であり、設計で図面上に示された必要精度に対し、十分な精度を持つ計測器が使用されているものと考え、校正結果に対しては単にその計測器のスペックに適合しているかを判断しています。
計測器を使う部門が判断すべき
本庄健一 ものづくりの管理者から見ると、ものをつくるほうとすればその計測器で何を測定するかわかるが、校正部門ではその計測器がどのように使われているかわからないので、計測器のメーカーの示すスペックで判断しています。広義の計測管理として、その計測器でよいかの判断はその計測器を使う部門が判断すべきと思います。
阿知波正之(司会) 使う部門がそれほどレベルが高いのですか。その選択が最適かどうか評価はされているのですか。
本庄健一 計測管理というと範囲が広くなるが、それは校正部門の仕事ではなく使用部門の技術者の職務と考えます。
計測器の選定基準を作成した
阿知波正之(司会) 校正部門の仕事ではないが、計測管理としては重要であり、用途に対する選定基準を作成した経験があります。
植手稔 ISO10012に立ち返ると、用途に合った計測器を選定する要求があります。
阿知波正之(司会) 製品設計では設計審査がおこなわれるように、個々の計測器の選定はそれぞれの使用部門がおこなうにしても、その審査に相当する業務は必要だと思います。
計測管理部門がチェックしている
植手稔 私の勤めている会社の計測管理部門が計測器を導入するときに、何を測定するのか、どの程度の精度で管理するのか、計測器のスペックは対応しているか、精度比はどうかなどをチェックして最終承認するシステムになっています。
計測管理実施要領を全部門に適用
伊藤佳宏 所属する会社には、社内基準として計測管理実施要領があり、測定する製品の公差に対して計測器のスペックは1/10とか計測器の校正精度は1/4という規定が全部門に適用されています。
レビューを定常的に
阿久津光 そのような規定があり、厳しい要求があるときはレビューがあるが、できれば計量確認としてそのレビューが定常的におこなわれるとよいです。
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