日本計量新報 2015年11月1日 (3079号)5面掲載
ニュース映像に測定の不確かさ?
計量士 渡辺英夫 |
10月、欧州のある自動車メーカーの排ガス規制違反が発覚しました。排ガス規制をあなどるものとして会社の体質含めて批判の的となっており、測定法の見直しに発展しています。一企業の不祥事が国境を越えてグローバルな問題へと広がりつつあります。
測定は、その目的があるからこそ意義あるものです。測りやすい条件から、現実に即した条件をめざす努力が必要であることを強く感じました。実データを検証し、指摘した米国の技術に対する姿勢に、ただ敬服する次第です。このような指摘が日本から発せられたら世界中から真の技術大国と言われるのかなと残念にも思いました。
さて、ここまでは企業の「モノづくり」の姿勢の問題、課題とする一般的な事例の1つにとどまることと思いますが、気にとまったのは、実は、10月19日の深夜のニュースで、排ガス測定結果の棒グラフも番組の映像で紹介されていたことでした。そこで「オヤッ?」と気づかれた人もいるかと思いますが、車種ごとの棒グラフの先端に不確かさの幅を表す表示がついていました。
これには驚きました。不確かさは校正のトレーサビリティのみでなく、このように実測データの信憑性を担保するものとして活用でき、実際に活用されていることを知りました。全く驚きました。測定の最大値、最小値では意味がなく、平均値と不確かさの表示こそ信頼の証と感心しました。
測定は、ばらつきます。トレーサビリティとまではいかないまでも、測定の信頼を高める手法、表現として、測定現場で広まっていったらと、感じた次第です。 |